まちづくり研究室 11

まちづくり公民館Vol.1/平成11年9月発行
目次/■ごあいさつ■第416回米子市議会活動報告■中田利幸の所属委員会、会派「市民」について■まちづくり掲示板「山陰歴史館整備事業」■中田利幸市議会雑感「日々これ勉強」

■ごあいさつ
盛夏の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
皆様の絶大なるご支援によりまして、米子市議会に押し上げていただきましたこと、私、この感激を生涯忘れることはありません。本当にありがとうございました。
当選以来これまでの間、会派「市民」の結成に始まり臨時議会、6月定例議会とめまぐるしい日程の中で、お世話になりました皆様へのご挨拶も不充分なまま今日に至りましたことを心よりお詫び申し上げます。
私にとりまして市議会という場所は、今までの日常との予想外の隔たりがあり、戸惑う場面もございましたが、皆様による2671票の重みを受けて堂々と初の議会をのりこえる事が
できました。
今後いかに普通の市民感覚で「住む人が主役のまちづくり」を実現していくかが私の責務であり、肝に銘じているところでございます。
今後とも、今まで以上に皆様と情報や意見の交換を密にし、より一層のご指導を賜りますよう心よりお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。

■第416回米子市議会活動報告
学校教育に大きな変革をもたらす「完全週5日制」について、米子市教育長に質問しました。
●中田議員/
文部省は2002年度から始まる完全学校週5日制に向けた教育内容や学校裁量の拡大、総合的学習時間の新設、選択履修の拡大等を打ち出していますが、米子市としては、1.学校だけではなく、家庭、地域社会が連携してこどもたちの生きる力をはぐくみ、すこやかな成長を促すことを目的に文部省が策定した「全国子供プラン(緊急3ヶ年戦略)」への対応はどうなっているのでしょうか? また、保護者や、土曜、休日の受け皿となる地域の拠点、とりわけ公民館に対してどのように周知活動が進められているのでしょうか?
2.現在のこどもたちを取り巻く状況と今後について誰もが危惧するところですが、こどもたちが心豊かですこやかに育つように対策を講ずることが米子の大人達の責務だと思います。
近年のこどもたちには、自分自身で考えて問題を解決しようとする力の低下、道徳心やモラル教育の必要性等が指摘されているなかで、2002年を待たず各学校に対して具体的にどのような指導をされているのでしょうか? また、地域の公民館では具体的な取組を準備されているのでしょうか?
3.森田市長の施政方針にも、学校週5日制に対応した特色ある学校運営と地域に根ざした学校教育の一層の充実をはかる「豊かな人間づくり事業」が掲げられており、私は、このような予算配置について高く評価できるものと考えます。ただ、体験的学習や情報教育、国際化へ対応した受け皿づくり等、土曜、休日の人材確保や教材整備など、限られた期間で実施しなければならない課題が山積しており、予算的配置が不可欠です。
そこで、現在「豊かな人間づくり事業」が各校一律20万円とされていますが、一連の教育改革に配慮した予算編成が学校だけでなく、生涯学習の分野も含めてどのように進められているのでしょう? また、今後はどのように推移していくのでしょうか?
●森田米子市長/
1.週5日制の実施は、こどもたちを家庭あるいは地域に返すというねらいがあると考えますが、問題は、こどもたちが休みになってもお父さんお母さんがたは仕事で面倒をみれないといった実態だと思います。 そこで、現在の月2回の土曜閉校に際しても体育館やグランドを開放したり、公民館の図書館や卓球台を利用するといったかたちで異学年のこどもたちとの交流促進をはかるといった取組を続けています。 そこで、公民館等の拠点においても2002年に向けての周知は充分になされていると理解しています。
2.最近のこどもたちは体験に欠ける、だから自分のことしか考えない、思いやりや協調性に欠けるといった指摘がなされますが、本市では数年前から体験学習を重視して学校教育、社会教育に努めています。 しかし、やはり大切なのは学校と家庭と地域の連携なわけでして、お互いが連携をとりながらこどもを育てていかなければいけないことを強く感じており、そういった指導をいたしております。
3.豊かな人間づくり事業では、各校長先生の裁量で一律20万を役立てていただいています。これは、隣の学校の真似をするのではなく、地域の実態に応じた特色ある学校活動ができるよう措置しています。金額は少ないのですが、市長さんにお願いしていただいて少しでも多くしていただけたらと考えています。
また、各公民館に対しましては一律50数万円を措置していますが、あくまで地域における公民館活動のためにという主旨の予算ですので、地域のこどもたちのために智恵をしぼっていただいているのが現状です。
●中田議員/
学校や公民館施設の開放を進められているということですが、ただ開放するだけでは使い切れていないのが実態です。やはり、大人の介在といった教育のかたちがスタート時点だけでも必要だと思います。こどもたちの意見も含めた論議と理解を深めながら、できるだけ早く2002年に向けた受け皿づくりの最初の段階の準備を進めていただきたいと思います。学校、家庭、地域の連携ですが、これは本当に重要な問題です。それぞれの役割や持ち分を理解し皆が自覚を持たなければ連携ということの本当の意味での力を発揮することは困難だと私は考えます。公民館活動を取り上げましたのも、地域の社会環境の中でこどもたちが育っていくという認識が不充分だと感じるからです。時間的な余裕はあまりないと思いますが、いかがお考えでしょうか。
●森田米子市長/
最初の第一歩が大切だというのは本当にそう感じています。
よく言われますのは父親の存在の大切さということです。最近では、城山や公園などで親子一緒に散策する姿をよく目にしますが大変喜ばしいことだと思います。やはり、大人にも積極的に介在していただいて、こどもたちの受け皿となる活動をある程度援助していただくというかたちにならなければいけないと思います。
地域との連携という言葉は我々も安易に使いがちなのですが、本当に難しいことだと思います。
例えば普段の隣近所との付き合いが疎遠になっていることが問題ではないかとも思います。
親だけで子供を育てるという発想ではなくて、近所の人々と互いに声を掛け合うことで、互いに思いやりをもって接していけるならば、少子化社会に向けて地域でこどもを育てていくうえでの連携が少しずつ生まれていくのではないかと期待しています。
●中田議員/
残すところ3年足らずとなっています。ぜひ、より一層のご努力をお願いしたいと思います。
市長が今期、総仕上げとして目指しておられます健康保養都市米子、私は大変すばらしい構想だと思っています。ただ、まちづくりは着実に進んでいますが、まちづくりの基本はひとづくりだと思います。住む人が心豊かで人の尊厳を大切にし、しかも主体的、創造的に生きる力を持たなければ、本当の意味での健康保養都市とはならないと思います。
健康の一つの概念としてウェルネスという考え方があります。健康の要素を従来の身体的健康、精神的健康に加えて、情緒的健康、社会的健康、知的健康という5つの要素で考えるというものなんですが、ぜひ米子のまちづくりも次の時代を担う人達の多角的な成長に配慮した健康保養都市の総仕上げとして、教育の問題も受け止めてほしいと思いますし、ぜひ予算的にも健康であってほしいと要望しておきます。

[用語解説]
●全国こどもプラン
週5日制の2002年スタートまでに、地域で子供を育てる環境整備や活動振興のために文部省が策定した事業。
●豊かな人間づくり事業
週5日制に対応するための学校運営と、地域に根ざした学校教育の一層の充実をはかる。
●ウェルネス
(Wellness)健康の要素を従来の身体的、精神的健康に加えて、情緒、社会、知的健康という5つの要素で考えるというもの

弓ヶ浜公園を中心にした、あたらしい文化発信拠点作りについての提案と市長の考えを質問しました。
●中田議員/
弓ヶ浜公園は、昨年10月のオープン以来、米子市民はもとより周辺各地の多くの方、とりわけ幅広い世代に利用されており、大変喜ばしいことと考えていますが、
1.公園への交通手段は自家用車利用が中心ですが、今後の高齢社会への対応や環境への配慮も含めた交通政策の観点からも公共交通の有効利用が必要だと思いますが、今後の取組と広報活動をどのように進めるお考えでしょうか?
2.小さなこどもから高齢者まで全ての世代に配慮した公園整備の進め方が求められていると思いますが、芝生の広場を中心とする開放的な空間があり世代間交流の場として、あるいはノーマライゼーション推進の場としての今後の活用が期待されます。しかし、ベンチや日陰となる休憩施設が不足している、駐輪場がないといった市民の声が聞かれるのも事実です。
ですが私は、これらの意見を否定的に捉えるのではなく、市民参加型のワークショップ手法によって公園づくりを進めてきた成果であると受け止めています。
そこで、公園の施設を今後どのように充実させていくのでしょうか?
●森田米子市長/
公園への交通手段として、徒歩3分の三柳団地に路線バスが運行されていますので、今後周知に努めたいと思います。駐輪場、休憩施設の不足については、屋根付きの日陰施設の整備を考えています。ご承知のように弓ヶ浜公園はこどもさんや高齢者、障害者の方々の意見を参考に、手作りの公園として事業に反映させております。特に障害のあるお子さんに充分配慮した遊具が揃えてあることに高い評価をいただいています。公園の中心に芝生を広くとり、視界もよく明るい緑の空間を創り出すことによって三世代にわたる交流や、障害者との交流の場ともなっています。今後も安心して利用できる公園をめざして整備していきたいと考えています。
●中田議員/
交通手段につきましては、お孫さん連れの高齢者や身障者の方といった交通弱者に配慮した
利便性と安全性の向上をめざしていただきたいと思います。特に中心市街地からの公共交通の周知を徹底してほしいと思います。そして、弓ヶ浜公園の最大の特徴はユニバーサルデザインであり、市民参加型のワークショップ方式であると思います。
公園整備についてハード面を中心とした答弁がありましたが、これからの都市空間づくりは、
そこに住む人達がどのように暮らしたいのかというソフト面を充分踏まえていかなくてはならないと考えます。弓ヶ浜公園の特徴が今後も活かされていくならば、仮に公園利用に問題が生じても、市民が創った公園を市民が守り、育てるという力が必ず有効に作用するものと考えます。ぜひとも市民参加の公園づくりという手法の継続を強く要望しますとともに、公園に限らず今後進められるまちづくりの推進にもぜひ活用していただきますよう要望します。

[用語解説]
●ノーマライゼーション
(Normalization)福祉の基本理想のひとつ。
障害者や高齢者が特別な目で見られる事無く普通の人間として扱われること。
●ワークショップ
(Workshop)本来は工場、作業場などの意味だが、参加者が自分を確かめる体験型講習システムを指す場合も使われる。
●ユニバーサルデザイン
(Universal Design)障害者、高齢者および健常者などが区別無く使えるよう配慮されたデザイン。

■会派「市民」について
●「市民」参加議員/山形周弘、藤尾信之、中村昌哲、中田利幸中田利幸が参加する各種委員会。 会派「市民」とは。いまや従来の政党同士による”綱引き”政治や、利益誘導型政治は終わりを告げています。私たち会派「市民」は、それらの枠から抜け出し、真に米子に住む人がまちづくりに直接参加できる政治を目指して前進を続けます。
会派「市民」のスローガン
●市民本位の政治をめざす…「市民が主役のまちづくり」
●市民に開かれた政治をめざす…「情報公開制度の確立、推進」
●これまでの慣例や体質をのりこえ議会に新風を…「米子の活性化は議会の活性化から」

■中田議員の所属する委員会
●常任委員会 総務文教委員会(総務、企画、教育委員会に関する問題)
●特別委員会 中海問題調査特別委員会(中海全般に関する問題)
●その他 美保水道協議会/米子市同和対策審議会/米子市環境審議会/米子市青少年問題協議会/米子市議会情報公開検討委員会

■まちづくり掲示板「山陰歴史館整備事業」
Q.「山陰歴史館整備事業」って、必要なのでしょうか?
新聞に山陰歴史館(旧市役所)の整備事業について載っていましたが、内容がイマイチはっきりしません? 事業の概要など、含めて意見を聞かせてください。

■市民の皆さんの意見
●米子市政70周年記念事業とのことですから、今有る山陰歴史館以上に米子市が後生に誇れる博物館をぜひ作り上げてほしいと思います。きちんと改修して、歴史的遺産としての外観も保護して欲しいです。
●12億もの「税金」を使うのなら、全く新規に郊外の広い場所に建てた方がいいのではないでしょうか。歴史館は「壊れなければいい」と思います。
●博物館化?何を展示するのでしょうか?なにより展示ソフトの充実をお願いしたいです。
●レトロ調の外観がライトアップされた姿は、愛嬌がありますね。夏場に正面にある広場で
ビア・ガーデンなんかやったら、財政的にも期待できるんじゃないかな。

■中田利幸の意見
歴史館のみならず整備事業を考える時に大切なのは、1.誰のために 2.何のために という
明解な理由が見えてくること。この二つが市民レベルで議論され、一定の方向で合意が形成されることが大切です。せっかく新しく博物館を造ったり、奇麗に改修したりしても、利用されなくては意味がありません。市民あるいは観光客が、より良い「時間消費」の場として利用出来るように、小学生にも使える市内の文化財等が検索できるシステムの整備とか、あるいは大胆に前庭も使ったカフェ・レストランなど「公設・民営」方式も含めて検討し、ソフト面の構築を市民参加型で進める必要があります。

■山陰歴史館整備事業(米子市政70周年記念)概要
●事業期間/平成11年度~平成13年度(3ケ年)
●総事業費/12億1400万円(3ヶ年総額)
平成11年度分事業費…教育費から1億4390万1千円・地方債 9370万円・一般財源 5020万円1千円
●内容/米子市指定文化財としてふさわしい外観の保存のほか、貴重品の収蔵庫や特別展示室の整備、エレベーターなどの新設、耐震機能の強化などを行い同館の施設機能の充実を計る。
●山陰歴史館の「歴史」
早稲田大学 佐藤功一博士らの設計で昭和5年1月完成。新市役所が完成して以降は、郷土の歴史遺産を展示する「山陰歴史館」として今に至る。

■中田利幸市議会雑感「日々これ勉強」
6月定例議会の質問と答弁を収録しましたが、その私の質問に対する答弁のなかで注意しておきたいのは、学校週5日制について「公民館等の拠点においても、2002年に向けて周知は充分なされている」「各公民館において、地域の子供達のために知恵を絞っていただいている」というところです。
確かに地域をあげて努力されている所もありますが、全市的にはどうでしょうか。
皆さんの地域ではどうでしょうか。関心ある話題として考える機会を持っているでしょうか。
学校・家庭における教育や公民館を中心とした地域活動は、これからの高齢社会を支える人間関係と人材をどう育てるかという、重要な社会的課題だと思います。
議会活動を始めて以来、今痛烈に感じているのは、日々の物事を社会問題的にとらえるセンスと、「調べる」ということに対するフットワークの必要性です。
市民の声を市政に反映させるための政策力を持つことはもちろんのことですが、たとえば、行政」VS「住民」の構図が生じている時、議会が先頭に立って議論の中身について説明が出来るのか。今、その力量が求められており、いずれにしても、日々これ勉強あるのみです。