■2007.12.27
平成19年度12月議会で「米子―ソウル国際定期便利用促進実行委員会負担金」が可決された事で、会派「未来」より、
「年度内に、さらなる予算措置はしない事」
「年度内に緊急対策事業の見極めをする事」
「事業全体について、具体的な指標をもとに米子市の経済効果などの検証する事」
の3項目の付帯決議(案)が提出されました。
私は、交通政策論と経済対策による地域活性化の観点を中心に、本来の検証とは?と云う事や、投資的な政治・政策判断の性格上、市民への説明責任の必要性を中心に理論構成し討論しました。
米子空港と韓国の仁川空港を結ぶ国際定期路線は、米子市だけでなく、鳥取・島根両県の誘致合戦の末に、山陰の中心に位置し、交通結節点である米子に2001年4月から運行されています。
この航空路線は、両県の市民や経済活動の交流のみならず、アジア経済の中で今後の活性化をはかろうと将来を見据えた重要な位置づけにあるもので、搭乗率低下の要因や、目的に応じた様々な関連する取組が不充分な現段階で、米子市が、先行して後退的な意思表示をする事は、中海圏域内での共存関係に大きな影響を与える事になる事から、付帯決議に反対の立場で討論いたしました。
以下、その全文です。
路線開設の経過も含め詳しく述べていますので、是非ご一読下さい。
中田利幸「付帯決議案に対する反対討論」(全文)
米子―ソウルを結ぶ国際路線は、両国の友好提携当時は国際定期航空路が無く、韓国へ観光に行くにも、また交流を行うために出かけて行く時も、関西国際空港や岡山空港、広島空港などに長い時間をかけて行くしかなかった状況のなかで、鳥取県では、ソウルへの国際定期航空路開設を目指して、航空会社へ働きかけを行ってきたものの、鳥取県と島根県東部を合わせた利用圏域人口約110万人では路線維持はできないとの航空会社の判断が当時有りました。
しかし、鳥取県と江原道との交流、県内各市町村や民間団体など多くの交流が活発化するに伴い、量的にも質的にも航空路の存在が日韓交流を先導していくものとなり、定期的な人の流れをつくったことが航空業界の市場から評価され、2001年4月、米子空港と韓国の仁川空港の間に定期国際航空路が開設されたものであります。
この度の議論でありましたように、現在の搭乗率による路線存続につきましては様々な捉え方が存在していますが、現状の分析はもとよりこの地域の将来像を睨んだ投資的な政策判断としてどうなのかという事が重要と考えられます。
現状では、北東アジアの一体化が進む将来をにらんだ国際時代のなかで「山陰は乗り遅れている」との認識が多く存在しています。
これに対応するためにも路線がもつ意味は極めて大きく、また「近くにソウル便があるからできる」小さな子供たちからの草の根交流の観点からも路線の意義についての理解と利用促進が必要と考えます。
先日、平井鳥取県知事も記者会見等において「米子―ソウル便についての見解として定期的な航空路があることはアジアとつながっていく基礎条件であり、企業と話をしていてもソウルとの定期便は大きなセールスポイントになっている。」と発言。
また「鳥取自動車道など高速道路が充実すれば、米子よりソウル便が多い岡山空港を利用する人が増え、米子の国際線の存在意義は薄れないか。」という問いに対して、「観光客を呼び込むには、空港に近くないとルートを組めない。岡山に降りてその後、鳥取を回るとはならない。
米子空港に降りてもらう中でいろいろ(な可能性が)生まれる。」と答えています。
また物流上も重要で、デリバリー体制が整えられていることが重視される時代であり、山陰地方の中央に世界への窓が開いている意義は大きい。との認識を明らかにされています。
近年における経済・社会活動のグローバル化・ボーダーレス化の一層の進展、アジア諸国等の経済発展、少子高齢化の進行、国民ニーズの多様化・高度化等、我が国を取り巻く経済社会構造は大きな変化を遂げてきており、このため、今後の空港を考えるに当たっては、このような経済社会構造の変化の中で、我が国の政策が中長期的に目指す経済社会を念頭に置き、空港整備が21 世紀における経済・社会活動を十分に支えるという方向にある中で、この地域が経済活動の基盤として、国際定期路線の存在により競争力を強化して行こうとする観点を持つことは重要であると考えます。
今後の航空路線の特性と役割を考えるに当たり、総合交通体系の中で、交通機関としての航空路線の特性と役割を踏まえ、空港整備と併せてどのように航空路線の特性を発揮させ、利用者の利便性を向上させていくのかという観点で将来像を明確にしていくことが必要であり、その検証も出来るレベルにない現段階での判断は、極めて慎重を期する必要があります。
移動に伴う時間の短縮は、市民生活の向上や経済活動の活性化等に極めて大きな影響を及ぼすことに鑑み、本市は、高速交通サービスの利便が享受されるよう、これまで高速交通手段をその特性に応じて可能な限り相互補完的に組み合わせた交通体系を目指してきており、まだ、その途上にある段階であります。
そのなかで航空路線は国際輸送分野、国内の中・長距離輸送分野を中心として、個人の旅行ニーズを満たすほか、企業活動を支え市民の生活水準の向上や経済発展に大きな役割を果たしてきています。
さらに、現在あらゆる経済社会活動は否応無しに諸外国との活発な交流を通じて展開されており、国際交流がますます増大している傾向にあり、経済社会情勢等の大きな変化に伴い、航空の役割は大きく変化してきており、今後もその役割が増大していくことが予想されています。
また、今後の対岸諸国との経済活動を考えれば、航空貨物輸送に関しても航空路線は、生鮮品・高付加価値製品等の輸送で有効な輸送手段の一つであり、その道筋の可能性を高めておく必要もあります。
さらに、都市再生・地域の活性化に関して、国際航空路線はボーダーレスな国家間、都市間の関係の中で、社会システムとして都市の国際競争力強化に貢献する役割も有し、また、地域間の交流拡大を促進するとともに地域経済への波及効果により、地域の活性化に今後とも大きな役割を有するものと考えられます。
以上の認識に立って、米子空港の路線の有り様を考えた場合、米子市だけの経済効果等、狭義な意味における費用対効果の検証ではなく、圏域としての存在意義を踏まえた米子市の判断と動きが求められていると考えます。
以上の立場から、上程されております付帯決議(案)を考えた場合、先ず、第1項の「平成19年度内のさらなる補正予算措置はしないこと」については、利用促進実行委員会に参加する自治体や団体等との関係のなかで、米子市が現段階で利用促進について「さらなる予算措置をしない」という結論付けをする事は、圏域の共存関係のなかであまりにも配慮の欠けた唐突な態度と云わざるを得ません。
次に第2項の「遅くとも平成19年3月末をめどに、緊急対策事業の見極めをすること」につきましては、県の行う「緊急運行支援」と、この度の利用促進実行委員会の「利用促進支援」とは、緊急支援策の性質が違うものであると共に、厳寒期であるこの時期から年度末までの期間で、利用促進の緊急対策の見極めをどういう指標で行うのかは、極めて難しいものであり、政治的判断の領域を如何に市民に問いかけるかと言う事が重要であり、早速に今議会で決議すべき容易なものではありません。
最後に3項の「事業全体について具体的な指標をもとに、米子市の経済効果などの検証をすること」につきましては、鳥取県が示したものとして米子-ソウル国際定期便の経済的効果のうち、金額換算可能なものについて同便の就航前(平成12年度)に行った就航に伴う経済効果の試算を参考に、実際の搭乗者実績等の数値を用いて算定したものとして、
1.鳥取・島根両県の韓国渡航時における空港利用状況を基に、
他空港に代えて米子空港を利用することによって得られる空港までのアクセスに要する時間の短縮効果、交通費の削減効果を便益として評価した地域居住者の便益 → 約2億3千万円
2.米子-ソウル便による韓国からの入込客によって、地域の産業に生じる生産誘発効果を算定し観光業等の売上げ増加、その他産業への波及効果を含め経済的効果として評価した韓国人来訪者による経済波及効果 → 約3億6千万円
という数字が出ておりますが、同等の指標による検証だけでの判断ではなく、国際定期便には金額換算として指標化すべき他の効果や現段階では指標化しにくいものも含め、
●企業誘致のアピールポイントとしての効果
●地域産業の国際化・高度化
●地域ブランド産品等の輸出コスト縮減効果
●国際市場での販売ルート構築の貢献度
●国際航空便の利用に適した高付加価値型の産業等の立地等の可能性
●北東アジア諸地域との国際交流の推進への貢献度
●各地域を結ぶ国際チャーター便など多様な路線の確保への影響
●米子-ソウル便就航及び韓国からの観光客増に伴う雇用量の変化
●航空会社及び旅行会社が米子-ソウル便及び旅行商品を広告・露出することによる宣伝効果
●県民が世界に開かれたゲートを持つことによる国際感覚の醸成
などなど様々な効果が考えられます。
これらを指標化することによって、現在、金額として算出できる「地域居住者の便益」と「経済波及効果」と本市の「税収の変化量」と合わせ見て、初めて正確な「指標による効果の検証」となるのでありますが、現在その指標化そのものが「費用対効果」検証のツールとして持ちえていないのが本市の現状であります。
当局も含め「費用対効果」という言葉を安易に使いますが、「費用」という金額に「効果」を対比して検証する場合、社会的効果も含め効果項目を学術的に数値化し、金額に換算して対比しなければ、有効な検証とはなりません。
したがって、米子空港の国際路線の検証につきましては、これから将来にわたって圏域として、その効果を求めようとするものであり、現段階では極めて限られた範囲でしか効果を測定推測する事しか出来ず、その限られた要素のうち経済効果などの効果計測による是非論は、検証の正確性に欠ける判断と云わざるを得ません。
だからこそ、政治的、政策的判断が求められるのであります。
以上のことから私は、提案されている3項目の付帯決議は、関係自治体や民間団体との関係においても有益なメッセージとは反するものとなる懸念も含め、丁寧に住民理解へ対応すべき課題と考え、提案の付帯決議には反対であります。
何卒、議員各位のご賛同を賜りますよう訴え、私の討論と致します。