■第431回米子市議会(平成14年3月7日~27日の間開催されました)で行った質問と、それに対する答弁を掲載します。
今回は、『小・中学校教育について』、『高齢者支援対策について』の2点について重点的に質問しました。
中田
米子市が活力のあるまちづくりの方向で発展し、新しい未来を切り開いていくためには、
子供達が夢と希望を抱くことのできる社会展望と、心豊かな社会環境の構築を図ることが重要だと考えます。
戦後教育は、教育の機会均等の理念の下に教育水準の向上を目指し、量的拡大を図ることで
社会の発展に寄与してきました。
しかし、今日の経済・社会形態は大きな転換期に入り、これからの新しい時代に対応できる人材を育成していく必要が高まり、教育体制の再整備が必要となっています。
以上の観点から、米子市における小・中学校の教育における2つの課題についてお伺いします。
まず1点目は、学校週5日制のなかで、学習内容の変化に対応した「わかる授業」・「楽しい授業」の実現について、どのような準備体制がとられているのか。
2点目には、ここ数年、この米子市においても憂慮されている児童・生徒の問題行動について、どのような体制で対処しているのか。
教育長答弁
戦後の教育が画一的、一方的で、つめ込み教育と批判されたため、教育課程が改定されたと理解しています。
「わかる授業」「楽しい授業」については、授業内容が解れば授業が楽しくなるし、学校で友達と遊ぶことができれば楽しい学校生活になるということです。
特に最近、関係が希薄になり、勉強も中途半端といった感があるため、各学校には基礎基本をしっかり身に付けれるように、ひとり一人を大切に指導するよう指示しています。
また、個に応じた授業と、グループ学習、T・T(ティーム・ティーチング)方式での基礎基本の習得と体験学習等を通じ、創意工夫した楽しい授業を展開するよう指導しています。
問題行動については、主として小学校では万引きが多く、中学校では、喫煙・飲酒・対人暴力・器物破損の順。
各学校は、教育相談をしながら生徒指導をしており、教育委員会も関わり、関係機関とも相談しながら対応しています。
中田
一人一人を大切にして、個性を生かす教育を充実していくという基本的な考えの下に、
今日までティーム・ティーチングというやり方を進めてこられたわけですが、
私はこのT・T方式というのが効果が高いと見ています。
具体的には、
1. つまずいた場合など、個に対する指導の展開がやりやすい
2. 柔軟な指導体制が仕組みやすく、学校の特色を出し、新しい教育課程の実施の趣旨に添うことができる
3. 学校裁量として、柔軟な対応ができる
4. 学級格差があまり生じない
などが上げられます。
教員のキャリアだけの問題ではなく、学級格差が極力生じないような進め方が必要であり、
一斉授業の形式による個々への指導の弱さという問題の克服という面で、T・T方式が採られてきたわけでしょうから、その効果を下回ることのないよう学習体制を取っていただくよう要望します。
2点目の問題行動に対する体制については、現在は主に学校が、それぞれ関係機関に個別に相談し連携をとるというやり方であり、生活指導主事の先生が定期的に集まって諸問題について協議するというのが今の体制です。
私は、現体制の問題点として、
1. 学校と関係機関が個別の対応をとるため、連携した取り組みが進めにくい
2. 学校ごとに対応を判断するので、対応の仕方が学校によって異なり、場合によっては適切な対応が取れない場合が生じる
3. 人事異動によって校長や生徒指導主事が変わるため、対応が異なったりノウハウの蓄積がしにくいなどが挙げられると思います。
文部科学省では、「少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議」を設けて、
最近の問題行動等の実態の分析や対応策について検討し、報告を取りまとめていますが、
その中で児童・生徒のサインを見逃さず、問題行動の前兆を把握し、早期に対応することが重要であること、
学校と関係機関との間で、単なる情報の交換だけでなく、自らの役割を果たしつつ、
一体となって対応を行なう事が必要であることを強調しています。
具体的な対応策として、カウンセラー配置の充実や、社会性を育むための体験活動の充実、
地域における関係機関のネットワークの形成という、現体制からもう1歩踏み込んだ「サポートチームの組織化」を挙げています。
私は、米子市においても、早急に「サポートチーム」をつくって連携した対応・指導をより効果的に進めるべきだと考えます。
問題行動への対処は非常にデリケートな問題もあるので、守秘義務のある公的機関が窓口を一本化して、総合的な判断の下に適切な判断と指導が、学校に対しても保護者に対しても可能になるような体制を、教育委員会が中心となってつくらなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
教育長答弁
問題行動への対処について、それぞれの学校で苦慮しているのが実態です。
問題行動を起こす子供達が爆発してからでは、教育委員会が入っても警察が入っても、
誰が入っても対応できなくなる実態を強く感じています。
今後は、もう1歩踏み込んだ取組みについてご提案頂いたようなサポート体制を確立し、対応マニュアルをつくり、市教育委員会が中心となって取組む所存です。
中田
今、問題行動は携帯電話の使用などによって広域化しており、混沌とした社会状況の影響もあってか、特殊な問題ではなくて、
どの学校でも起こり得る問題となっています。
各学校が「問題行動に混乱し、健全な教育体制をとる余裕が無い」ということにならないよう、適切な指導と援助が可能になるサポート体制をとって頂くよう要望します。
中田
今後、十数年間で団塊の世代が高齢期を迎え、高齢化は急速に進み、社会の様々な場面で大きな影響をもたらすことが予想されています。
そのなかで、若い世代を中心に社会保障制度などにおける世代間の公平性に対する懸念は強まっており、今後、持続可能な社会保障制度のためにも、社会への役割として負担能力に応じた公平感といった視点での社会基盤の立て直しが求められています。
本市においても、既に65歳以上の高齢者は19%台に達し、国の平均を1歩先取りした高齢化の進捗が見られ、これからの高齢者像をどのように描こうとするのかが重要だと考えます。
そこで、米子市における高齢者支援の施策についてお伺いします。
まず1点目は、援助が必要な高齢者の実態について。
米子市において家族以外の他者から介護・援助を必要とする高齢者は、在宅、病院、福祉施設などを合わせてどのくらいなのか、その実態についてお伺いします。
2点目は、米子市老人保健福祉計画について。
この計画は、老人福祉法および老人保健法の規定に基づいた計画として、「健やかに 幸せに みんなで豊かなまちづくり」を目指す健康保養都市の理念に沿った施策の推進を図るため、平成12年度に策定された計画ですが、施策の進捗状況、とりわけ健康な高齢者に対する「生きがい対策」の状況および在宅福祉施策の状況について、また、今後の課題をどの様に考えているかをお伺いします。
3点目に、バリアフリー施策の進捗状況について。
高齢者の自立と社会参加への支援施策として、生活空間における物理的な障壁を無くし、安全で身体的負担の少ない状況で移動できるように、環境の改善をすすめる重要性については言うまでもありませんが、バリアフリー化についてはどの様な取組みがされているのかをお伺いします。
市長答弁
米子市では平成13年10月末時点で高齢者人口の15.6%、人数にして4,230人の方が介護保険で「要支援」以上の認定を受けており、老人保険福祉計画に沿って明るい長寿社会の実現に向けたサービスを提供しております。
「生きがい対策」としては、老人クラブへの助成、陶芸・木彫講座の開催をはじめ、高齢者の健康増進、レクリエーション等への参加促進に努めています。
在宅福祉施策の状況と今後の課題については、「生きがいデイサービス」「配食サービス」等介護保険を補完するサービスを提供すると共に、基幹型在宅介護支援センターを設置し、市内の要援護老人に関する総合的な連絡調整と支援等を行なっています。
大多数の高齢者が元気であることから、今後は地域の中で健康で生きがいを持って生活を送ることができるよう「元気な高齢者づくり対策」も併せて推進することが重要と認識しています。
公共施設のバリアフリー対策については重要な課題と認識しており、整備については歩道の段差解消、点字ブロックの設置等および幅の広い歩道の確保については年次的に実施していますが、今後も国・県や関係団体と連携し、整備を推進したいと考えています。
中田
一般的に介護や援助が必要な高齢者というのは15%ぐらいといわれており、米子市の数値というのは、一般的な数字とほぼ同じか、少し高めといえると思います。
介護・支援が必要な方に対する施策を充実させていくことは勿論ですが、これからの高齢社会の進行と行政がおかれている状況から見た場合、いかに高齢者が健康で、社会的な役割の中に位置付けられているかが、重要なポイントです。
長寿で有名な長野県と沖縄県の長寿社会の質的調査によると、長寿の形成には、身体的健康・社会的健康・精神的健康の三つの健康の獲得が不可欠であることが読み取れます。
身体的健康としては病気の早期対処や健康なからだの形成といったこと、社会的健康としては地域における日々の交流機会や高齢者の存在価値の再認識や役割意識といったこと、精神的健康としては生きがい活動の実践や自立心を維持できる生活環境といったこと。
私はこれが大変重要なことだと考えており、いわゆる自助・公助・共助の連携によって健康的な高齢社会をどう支えるかということになると考えます。
そこで、この健康社会の形成に向け必要な、社会に役立つ人的ネットワークや多用なサークル活動など、地域における基盤づくりをどう考えているのか再度お伺いします。
市長答弁
地域における基盤づくりが自助・公助・共助の連携によって健康的な高齢社会を支えるという考えは、全くそのとおりと考えます。
家族や地域のつながりが希薄化していることもあり、自助努力や行政の力だけで解決するには限界があるため、議員ご指摘のように地域の方々が協力し合える基盤づくりが必要で、試みのひとつとして、地域住民の共助、共生体制を模索する「ミニデイサービス事業」を実施したいと考えております。
中田
全市的に見ると、これから高齢化のピークに向かっていくわけですが、私はすでに高齢化率を20年も先取りしている中心市街地などで、長寿の形成の視点に立ったソフト事業を中心とするモデル事業を今すぐに開始すべきだと思います。
比較的都市機能もあり、学校週5日制の開始に伴って、高齢者の役割に対するニーズもあるわけで、教育委員会とも連携して是非進めていただきたいと考えますがいかがでしょうか。
市長答弁
ご指摘のソフト事業については、児童の健康を増進し情操を豊かにするうえで、学校週5日制の開始に伴い、豊かな経験や知識・技能をお持ちの高齢者に地域で果たして頂ける役割は非常に重要だと考えます。
高齢者と時間を共有することは、核家族化によって高齢者と接する機会の少なくなった児童にとって貴重な体験。
地域福祉の土壌づくりにも役立つと考えるので、今後教育委員会と連携をとり、研究して参りたいと思います。
中田
中心市街地の高齢化というのは、数から見ても率から見ても非常に進んでいるのはご承知のとおりです。
昨年、私の代表質問に対して市長は、中心市街地について「防災上の問題や地域の連帯感が年々薄れ、「孤立しがちであることの問題がある」「しかし、同時に、各種の公共施設や医療施設、商店街やサービス業などの民間の利便施設が集中しており、交通弱者や高齢者にとって実は非常に生活しやすい環境でもある。」と答弁されています。
しかし、高齢者の健康というのは、その様な利便性だけで成り立つものではないと考えます。
都会の方でも、寂しい、不幸な事故はあるわけで、適度に体と頭を使って、生きがいを感じる生活を施策として下支えしなければならないと考えます。
是非、地域の人的ネットワークづくりを試行されるよう要望しておきます。
次に、いざという時のセーフティーネットについてお伺いします。
現在は、日常的には生活管理の指導員の方にお世話を頂いているわけですが、緊急時ともなると、貸し出しの緊急通報装置が不安解消策であるのが実際です。
ですが、家電製品を利用した双方向性の通信手段を有効活用した方がトータルでは安くつくと思われますし、高齢者の方も日常生活と自然に溶け込んだかたちで安心を得ることが出来ると思いますが、このようなセーフティーネットの研究を進めてはどうでしょうか。
また、このような情報施策とも絡んだ問題だと思いますが、広域化を目指している市長が、
これからの広域の中の高齢化施策をどう描いておられるのか、併せてお伺いします。
市長答弁
家電製品を利用したセーフティーネットのあり方については今後研究して参りたいと思います。
なお、現在、民生児童委員、協力員をはじめとする地域の方の協力で安否確認を行なっておりますが、地域福祉を推進する観点から、地域の皆様すべてで支え合って行けるような意識の醸成も大切にしたいと思います。
広域化における高齢者施策については、市町村合併がなされた暁には、一時的に各種サービスに地域格差が生じることが予想されますが、一行政区域内での格差は好ましくなく、サービスに偏りが生じないようにすることが大切だと考えています。
中田
最近は、パソコンや携帯電話を利用し、日常生活の変化を察知するような家電製品の開発も進んでいます。
プライバシーを侵害しない範囲で、安心を得るようなものとして、高齢者の生活の規則性が崩れた事をキャッチして、コンタクトをとる商品が注目されています。
先ほどの安否確認を、より実効性の高いものにすることが可能だと思うので是非研究して頂きたいと思います。
広域の中の高齢施策ですが、行政規模を大きくして行こうという方向性のなかでは、機能集中あるいは機能分担せざるを得ない状況は想定できないものか、安心な在宅を基本においた施策の推進と整合性を持たせることのできる高齢者福祉を推進していくことを要望します。
次に、交通バリアフリー法について。市町村が基本構想を作成することが出来る「特定旅客施設」の条件を満たすのは、本市においては米子駅ぐらいだと思いますが、この交通バリアフリーという課題を今後どのように進めていく計画なのか、お伺いします。
市長答弁
高齢者の方々が自立した日常生活や社会生活を営むうえで、鉄道やバスなど公共交通機関を利用した移動手段の果たす役割は極めて大きいと認識しています。
そのため、各施設におけるバリアフリー化及びその周辺の道路等の拡幅や段差の解消等を一体的に講ずる必要があると考えます。
今後、公共交通事業者、公安委員会、道路管理者、利用者などで検討委員会を設置し、バリアフリー化のための基本構想の策定に取組む所存です。
中田
平成14年度に米子駅を中心とした地区について、基本構想策定のための検討委員会を設置するということですが、是非、利用される市民の意見、とりわけ高齢者・障害者の意見をキチンと反映させるよう、検討を進めて頂きたいと思います。
道路や公共施設はいいとして、問題は民間事業者であるJR米子駅のバリアフリー化だと思います。
バリアフリー法では、既設の旅客施設の場合、事業者の努力義務となっていますが、高速化で大変な今、バリアフリー化の推進は経営的に困難な状況があると思います。
しかし、高速化で利便性が高まり、ますます米子市の玄関として、あるいは市民にとっても買い物や文化ホール、ビッグシップ等の駅前の施設利用でJRの利用が増える事が充分考えられるわけで、事業者責任の問題ということにならないように、基本構想、実施計画を策定していただくことを要望します。
また、バリアフリー化の施策については、日常生活における全市的なバリアフリーの推進で見た場合、交通バリアフリーのエリア外に高齢者が多数という実態の中で、面的なバリアフリーには限界があります。
市道全てをというわけにもいかず、地道に継続的に整備ということになると思いますが、この高齢化のスピードや現在の交通事故の実態から見て、少なくとも加速度的に推進すべき必要はあるはずです。
特に、高齢者の利用頻度の高い施設は各校区にあり、その周辺の調査に基づく最低限のルート設定の中で、安心して歩けるルートを加速度的にバリアフリー化するお考えはないか伺います。
市長答弁
ご指摘のとおり、全ての市道のバリアフリー化には限界があります。利用者が安全かつ円滑に通行できるよう、利用頻度の高い施設周辺から計画的に整備して参る所存です。
中田
是非、加速度的にお願いします。高齢社会でまちづくりを総合的に推進し、地域全体を面的に整備していくというのは大変なことですし、時間もかかります。
今までのように、何でも行政でということは難しくなっており、住民自らの手で社会を支えるということが大切なことも事実です。
しかし、高齢化のスピードからいって、自助努力・自己責任が追いつかない状況もあり、高齢者の事故や不幸な事件も多々見受けられます。
国際高齢者年では、「すべての世代のための社会を目指して」が主題とされ、年齢にかかわりなく、意欲と能力に応じて就業や社会活動への参加が可能な社会を目指すべきとされ、前提として心身能力の低下があった時も、尊厳ある暮らしができる社会的安全装置が整備されている社会でなければならないとしています。
そのことを基本においた健康保養都市として、行政の役割を果たして頂くよう要望します。
(第431回米子市議会/平成14年3月7日~27日)